アンプの放電

真空管ギターアンプのシャーシ内の作業については、電源がオフの状態でも場合によっては感電し、死に至る可能性があるため、常に作業前にテスターで電圧が下がっているか確認することが必要です。その理由は、電解コンデンサが蓄電装置になっているからです(電源部分、回路図のC26〜C29)。電圧チェックはテスターで、シャーシ(グラウンド)と回路上の任意の箇所にそれぞれリードをあてて計測します。回路上のどの箇所にだいたい何ボルトの電圧がかかるはずかは回路図を見ればわかりますが、もし放電していれば電圧の桁が全然違うので、この作業ではわざわざ回路図を見なくても大丈夫です。とはいえ経験上、作業前に電圧チェックをして、強制放電が必要だったケースは一度もありません。その理由に関する説明としてもっとも明快だったのが、Billum Audioによる動画と記事です。

動画 Discharging
記事 Discharging the Capacitors

要点だけ抜き書きしておきます。

  • アンプが冷えた状態から電源をオンにし、完全に温まるのを待ってから電源をオフにするとアンプは自己放電する。
  • 真空管は温まっている場合のみ大量の電流を伝えるが、それゆえ真空管が温まると電解コンデンサは放電する。
  • ブルースJrのようにダイオードでなく、プリンストン・リヴァーブのような整流管を使用したアンプの場合でも、アンプが完全に温まった状態で電源をオフにすると自己放電する。
  • コードをかき鳴らしながら電源をオフにすることで放電できるという説もあるが、実はそれはアンプから電流がなくなっていくことを確認しているにすぎない。
  • 99%のケースでアンプは自己放電しているが、残りの1%のために必ず電圧チェックをする習慣をつけたほうがいい。
  • 強制放電させる必要がある場合は10kの抵抗をジャンパー線につないだものを使用することで、スパークさせずに安全にゆっくりと放電できる。
  • 電源をオン時に真空管が抜かれた状態であると、その後オフしても電解コンデンサに蓄電された状態になる。

放電方法でもっとも簡単なのは、プリ管(V1)のピン1あるいはピン6とシャーシ(グラウンド)をテストリードで接続する方法です。数秒で放電できます。下記の動画ではピン1に接続する方法を実演しています。


また、アキシャル型の電解コンデンサならば、電解コンデンサのそれぞれの足にラジオペンチで挟んだ抵抗のそれぞれの足をあてて放電させることもできます。下記の動画で実演しています。

Draining Filter Capacitors in a Fender Hot Rod Deluxe

英語で「放電させる」に相当する動詞はdischarge、drain、bleedです。また電源部分に用いられている高耐圧(500V)の電解コンデンサをfilter capacitor(あるいは略してfilter cap)と言います。